ブタめん

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「第7回 著作権の構造」

 はじめに

 

 こんにちは。

 

 前回の記事では、著作権の歴史についてお話しました。時代のニーズに合わせて、著作権の在り方も変化している、ということでした。

 

 今回の記事ではいよいよ、著作権の中身・構造について説明していきます。

 

 著作権の構造

 

 知的財産権

 

 まず著作権とは、知的財産権のひとつです。知的財産権とは、知的創作活動の権利を守るためのモノです。著作権産業財産権特許権・商標権など)が含まれます。

 

 著作権法で保護されるのは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」です(註1)。だから、単に頭の中にあるだけのアイデアや構想は、著作権法の保護の対象ではありません。経済的な利益の確保のために権利が認められるもの、科学技術分野における高度なもの、これらは商標や特許などで保護されます。

 

 著作権

 

著作権法第1条

「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」(註2)

 

 著作者等というのは、作品をつくった人(著作者)、作品の権利を持つ人(著作権者)、作品を演じたり放送したりして拡散する人(著作隣接者)のことです。

 著作権法とは、作品をつくった人、作品の権利を持つ人、作品を演じたり放送したりして広める人、これらの人びとの権利を守るための法律のことです。

 著作権は、著作者人格権著作権(財産権)とに分かれます。そして著作者人格権著作権(財産権)の中身も、さまざまな権利が含まれています。

 作品を広めてくれる人たちの権利は、著作隣接権で守られます。

 

 著作者人格権

 

 著作者人格権とは、著作者(作品をつくった人)だけが持つことのできる権利のことです。著作者の精神的利益を守ることが目的です。著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権などが含まれます。

 

 公表権

 

著作権法第18条第1項

著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。」(註3)

 

 ⇨公表権とは、作品を公開できる権利のことです。作品を公開できるってことは、逆に公開しない権利もあるよっていう意味も含まれています。要するに、勝手に作品を公開するなよと言える権利のことです。イヤイヤ、でもみんなネットや現実問わず、他人の作品を無断で公開しているよ。ブログやSNSに他人が書いた本やイラストを載せてるケド、本当はダメなの?著作権法違反で捕まっちゃうの!?このような疑問に関しては、今後の記事で解説予定です。ヒントは「著作権の制限」です。

 

 氏名表示権

 

著作権法第19条第1項

著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。」(註4)

 

 ⇨氏名表示権とは、作品を公開する際に、実名または変名(ペンネームなど)を付けて公開できる、または作者名を入れないで公開できる権利のことです。実名で名を売って実績と信頼を積み重ねたいって人は、実名を添えて作品を発表すれば良いし、身バレとか怖いし、名前を入れないか変名にしよっかなー、というのはアナタの判断でご自由にどうぞってことです。このブログを書いている人も、ブタめんなどというふざけた変名を使っていますけど、それも私の自由ですよって話です。

 

 同一性保持権

 

著作権法第20条第1項

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」(註5)

 

 ⇨同一性保持権とは、要するに、オレ(著作者)に無断で作品の内容やタイトルをイジくるなよと言える権利のことです。

 

 著作者人格権は手放せない

 

著作権法第59条

著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。」(註6)

 

 ⇨著作者人格権は、著作者(つくった人)のみが持てるモノなので、人にあげたりできないぜって言ってます。

 

 著作権(財産権)

 

 著作権(財産権)とは、著作者または著作権者の財産的利益を守るための権利を言います。法律用語では、広義の意味での著作権と、狭義の意味での著作権(財産権)に分かれるようです。著作権」という言葉が出てきた時、それが「著作権全般」を意味しているのか、それとも「財産権」のみを指しているのか、注意が必要です。

 財産権には、複製権、上演権・演奏権、上映権、公衆送信権、譲渡権、二次的著作物の利用に関する権利などが含まれます。

 

 複製権

 

著作権法第21条

著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」(註7)

 

 ⇨複製権とは、作品をつくった人もしくは権利を持つ人だけが、コピー(印刷・撮影・録音・録画など)できる権利を持つんだぜってことです。つくった人もしくは権利を持つ人だけがコピーできるってことは、すなわち、勝手にコピーするなよって言える権利があるって意味です。

 

 上演権・演奏権・上映権

 

著作権法第22条

著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」(註8)

 

 ⇨上演権・演奏権とは、作品を上演したり、演奏できる権利のことです。コレも先ほどの複製権同様、勝手に上演・演奏するなよって言える権利を意味します。

 同じような権利に、上映権(第22条の2)というモノがあります。コレは、勝手に上映するなよって言える権利のことです。

 

 公衆送信権

 

著作権法第23条第1項

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

 

著作権法第23条第2項「著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。」(註9)

 

 ⇨公衆送信とは、放送で流したり、インターネットに公開したりすることです。

 テレビやパソコン、スマホなどの受信機を用いて、公衆に向けて放送したり公開できる権利のことです。コレもやはり、勝手に放送するな・ネットに上げるなと言える権利を意味します。

 

 譲渡権

 

著作権法第26条の2

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。

 

著作権法第26条の2第2項

前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

 

著作権法第26条の2第2項第1号

前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物」(註10)

 

 ⇨譲渡権とは、作品そのものまたは作品のコピーを、公衆に提供できる権利のことです。コレも今までの権利同様、勝手に譲るなと言える権利を意味します。この権利は、いわゆる海賊版対策・転売差し止めを目的としてもうけられたモノのようです。

 なんですけど、「権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物」に関しては、適用しないとされています。つまり、お店で買った本やCD、ゲームソフト等は、譲渡権がすでに無くなっているので、メルカリで売ったりするのは自由ってことです。

 また、この権利は「公衆」向けのモノですから、「特定少数の相手」へのプレゼントとかならば問題ありません

 

 二次的著作物の利用に関する権利

 

著作権法第28条

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」(註11)

 

 ⇨二次的著作物とは、既存の作品を元にしてつくられた作品のことです。こういった二次的著作物の利用に関しては、二次的著作物をつくった人だけでなく、元の作品をつくった人にも権利がありますよってことです。たとえば、『ドラゴンボール』の続編である『ドラゴンボール超』をあなたが何らかのかたちで利用したい場合には、作者のとよたろう先生(二次的著作物の著作者)だけでなく、鳥山明先生(原著作物の著作者)にも、許可を取る必要があるってことです。(コレはあくまでも単純化した例えです。『ドラゴンボール超』の場合、出版社やアニメ制作会社、テレビ局なども権利を持っているハズですから、実際はもっとややこしいと思います。)

 

 財産権は他にも、口述権・展示権・頒布権・貸与権・翻訳権・翻案権などがあります。興味のある人は調べてみてください。

 

 イヤイヤ、勝手にコピーするなとか、勝手に演奏するなとか、勝手にネットに上げるなとか言うけどさ、みんな平気で、他人の作品を無断で公開してるってばよ。ブログやSNSに他人が書いた本やイラストを載せてるじゃん、論文とかでも引用が頻繁にされてるけど、本当はダメなの?著作権法違反で捕まっちゃうの!?確かにつくった人たちの権利を守ることは大事だけどさ、いちいち使いたいから良いですか?って確認するのは、許可を与える方も大変じゃない?はい、コレも先ほどの著作者人格権の公表権のケースと同様、今後の記事で解説予定です。ヒントは「著作権の制限」です。

 

 著作権(財産権)は手放せる

 

 ちなみに、ここまで見てきた財産権は、著作者人格権とは異なり、人に売ったり譲ったりすることが可能です。

 

著作権法第61条第1項

著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」(註12)

 

 コレが、著作権をややこしくさせている要因でもあります。たとえば、昔人気だったあるゲームソフトをダウンロード配信するとします。でも、販売会社には許可が取れたけど、制作会社の方はもう潰れていて、制作会社側の権利の所在が分からない、だから配信ができない、などということが起こりえるのです。私がよくプレイするゲームソフト「スーパーロボット大戦」(通称スパロボ)も、プレイヤーたちの間でよく、「この作品は版権がややこしいから、参戦できるのだろうか?」といったことが話題になります。版権とは、著作権の旧称のことです。著作権を複数の会社で管理しているから1社1社に許可を取るのが大変だったり、原作者が海外のアニメ会社著作権を売ったあげく、権利がたらい回しにされているから実質参戦は絶望的、などといった問題が出てくるのです。スパロボはさまざまなロボットアニメ作品が、一堂に会するゲームソフトです。ゲームソフトは商業目的でつくられるモノです。スパロボのスタッフは各作品の著作権者たちに、「参戦させたいんですけど良いですか?」と許可をもらっているのです。私たちがスパロボをプレイできるのも、そうした製作者たちの血のにじむような苦労があってこそなんですね。

 

 おわりに

 

 今回は、著作権の構造について述べてきました。著作権を一言で言い表すと、「勝手に〇〇するな!」と言える権利と言えるでしょう。勝手にコピーするな、勝手にイジくるな、こういった権利が著作権にはあるのですね。

 

 今回の内容を、改めて整理しておきます。

 著作権は、知的財産権のひとつである。

 著作権は、著作者人格権著作権(財産権)に分かれる。

 著作者人格権の中には、公表権・氏名表示権・同一性保持権などが含まれる。

 財産権には、複製権・上演権・演奏権・上映権・公衆送信権・二次的著作物の利用に関する権利、などが含まれている。

 財産権は人に売ったり譲ったりできるけど、著作者人格権は作品を生み出したあなただけのモノである。

 

 次回は、ブログを書いたりSNSで発信しているみなさんが特に知りたいであろう、「引用」について説明できればと思います。

 

 ではまた。

 

 

 

(1)「著作権法第2条1号」『e-GOV法令検索』最終閲覧2024年4月6日

  (https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048)。

(2)「著作権法第1条」同前。

(3)「著作権法第18条第1項」同前。

(4)「著作権法第19条第1項」同前。

(5)「著作権法第20条第1項」同前。

(6)「著作権法第59条」同前。

(7)「著作権法第21条」同前。

(8)「著作権法第22条」同前。

(9)「著作権法第23条第1項」「著作権法第23条第2項」同前。

(10)「著作権法第26条の2」「著作権法第26条の2第2項」「著作権法第26条の2第2項

  第1号」同前。

(11)「著作権法第28条」同前。

(12)「著作権法第61条第1項」同前。

 

 参考文献

 

宮武久佳『正しいコピペのすすめ』岩波書店、2017年。

久保田裕(監修)『13歳からの著作権』メイツ出版、2022年。

井上拓『SNS別 最新 著作権入門』誠文堂新光社、2022年。

広辞苑』第6版。

『ブリタニカ国際大百科事典』

『百科事典マイペディア』

 

※辞典類は筆者所有の電子辞書EX-word内臓の物を使用。

 

 参考資料

 

「令和5年度著作権テキスト」『文化庁ホームページ』最終閲覧2024年4月6日

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/93726501.html)。

 

 

 

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